2019年12月、長男が生まれました。
妻の妊娠中からずっと、4児の親である両親から育児のアドバイスを色々と聞いていたので、育児への心構えはだいぶできていましたし、不安もほとんどありませんでした。
しかし、想像と現実は全く違っていました。
夫婦ふたりで育児休業中だったのにも関わらず、思い通りにいかないストレスと寝不足による疲労で、不安いっぱいの日々を送ることになりました。
2ヶ月くらい経った頃からやっと、心に余裕がうまれ始めました。育児に慣れてきたのだと思います。
その時ふと「育児を経験することが、育児に慣れるための最適な手段なんじゃあないか」と思ったのが、この活動を始めるきっかけでした。
他の人はどう感じているのかが気になり、アンケートを取ったところ、「初めての育児、想像していたよりも大変だった」「2人目より、1人目の育児のほうが大変だった」という意見が多いことが判明。
『習うより慣れよ』ということわざもあることから、私の推察は当たっている気がしました。
長男が生まれ「育児当事者」となった私は、こういった話を立て続けに耳にするようになりました。
※ 令和3年度の男性の育児休業取得率は 13% で、令和7年までに 30% という政府目標が設定されています。
赤ちゃんが生まれることは幸せなイベントなのに、不満や不安を抱えて迎えてほしくない。
そう思いました。
親が不安でいたり心に余裕がない状態だと、赤ちゃんに愛情を注ぐのは難しくなってしまいます。
思い返せば、長男が生まれたての頃は、100%に近い愛情を注ぐことができていませんでした。
なぜこのような問題が起こってしまうのか?
それは、育児の理解度が低い状態で、初めて育児をするからではないかと考えました。
育児の理解度が低いと…
出産後、想像していたよりも育児が大変だった時に心に余裕がなくなってしまう
(産後うつや育児放棄など)
育児の理解度が低いと…
育児の理解度が高い人と想いが噛み合わないことが多くなる
(夫婦の一方が、仕事が忙しく育児に関われない場合など)
このような育児の理解度の差を育児ギャップと呼びます。
育児ギャップが大きいほど、大きな問題が生じやすくなるのです。
私が長男の育児にだんだん慣れてきたのも、育児の理解度が高まってきたから、つまり、育児ギャップが解消されてきたからだと思います。
そこで私は、初めて育児をする前に育児ギャップを解消できれば、問題を予防できると考えました。
つまり、育児ギャップを解消するための最適な手段が育児を経験することだとすれば、赤ちゃんが生まれる前に育児を経験できたらいいんじゃあないか。
そうすれば、心に余裕を持って初めての育児に臨めるはず。
そう思い、レンタルベビーをはじめました。
将来的に育児をしない人でも、育児体験は意味があると考えています。
話は少し変わりますが、私は「席ゆずりますマーク」という活動もしています。
簡単に説明すると、席を譲る側がつける意思表示のアイテムです。
マークのご購入者さんから「席に座るとき、席を必要としている人がいないかを探すようになりました」という声をしばしば頂きました。
これは、その方々の『当事者意識を持って初めて見えるようになった景色』なのです。
当事者ではなくとも、きっかけがあれば当事者意識を持つことができることを教わりました。
この育児体験も、将来的に育児をしない人にとって「育児の当事者意識」を持つきっかけになると思っています。
育児の当事者意識を持つ、つまり、育児に関する様々な事情(赤ちゃんが何をしても泣き止まないなど)に理解を示し共感できる方が増えることで、街中や電車、会社の中などに、優しい空間がもっと広がっていくと思いました。
「育児は想像以上に大変だった」のような、『経験して初めてわかった育児エピソード』がいくつかあります。
その内のひとつを書きます。
苦労したり愛情を与えたりしながら長男の育児をしている中で「親はこうやって自分を育ててくれたのか」と、ふと思いました。
今まで、親に「育ててくれてありがとう」と思う機会は何度もありましたが、ここまではっきりと感謝の気持ちを感じたことはありませんでした。
育児を経験することは、育児にたずさわっている人への感謝に気付ける機会なのです。
親だけではなく、パートナーや、育児と仕事を両立している上司や部下、我が子を預かってくれる保育士さんなど、様々な人へ感謝がうまれると思います。
この体験が、ありがとうを伝えるきっかけ作りにもなったら嬉しいです。